横浜北仲マルシェをもっと、おもしろく!


Interviewer
多くの方に横浜北仲マルシェの魅力を知ってもらいたい!
そんな思いを持ち発足した編集部のメンバーが、
オリジナルの視点と切り口で出店者さんに迫ります。
Vol11 2020 / 3 / 25(水)
大雨被害からの復活。
おいしいお米で耕作放棄地を救う
うしく農園の戦いは続く
昨年の大雨被害から、2ヶ月弱後、マルシェ復活を果たした千葉県佐倉市うしく農園さん。
しかし、畑や物流の混乱はそれ以上に続き、被害は甚大なものだったことが伺えます。
元々耕作放棄地だった土地を蘇らせる活動も行なっているうしく農園さんが、
どのような思いで農業を続けているのか。
お話を伺っていくと、食べることが応援になるということをあらためて感じることができました。
マルシェで独特な存在感を放つ
“うしくん”こと、うしく農園
うしくさんといえば、キッチンカーとのコラボでもおなじみですね。
横浜北仲マルシェで知らない人がいないほどの存在なのではないかと勝手に思っております。
おかげさまで、いろいろなところで使っていただくようになりました。
お野菜やお米の美味しい食べ方や
育った環境を教えてくれる“うしくん”
うしくさんのお店で買わなくても、いつの間にか食べていた、というお客さんも多いと思います。
うしく農園さんのお米の特徴を教えてください。
コシヒカリ、ふさこがね、
ゆめかなえの3品種を
育てています。
主にはコシヒカリですが、お米は育てる土地によって同じ品種でも食感が変わるんですよ。
コシヒカリといえば新潟県産が有名だと思いますが、そうした寒冷地で育てたお米と比べて、千葉などの関東で作られるものは、もちもちだけどどこかさらさらしているんですよね。
苗を育てる「苗箱」。
毎年1000枚用意します
そうした違いを生産者さんから聞きながら買えるのも、マルシェの楽しみですね。
お野菜も相当な種類を育てていらっしゃると聞きました。
はい、発酵させた米糠や伐採した街路樹を土に戻したものを使った有機肥料を使って、減農薬にこだわっています。
土にもかなり特徴があって、千葉の街路樹をくだいて土に自然に還ったものを、培土と混ぜて利用しています。マルシェにはだいたい10種類くらい持っていっています。
街路樹をくだき、土に還したもの
面白そうだなと思うと、試してみたくなっちゃって。
今は収穫が終わってしまったのですが、ミニ白菜は人気がありますね。普通の白菜よりもスジがやわらかいので、生のままサラダで食べられます。
あとは、オリジナルで生まれた「うしく菜」とか。
はい。大根や小松菜、キャベツなどを育てた土で、自然交配で生まれた野菜です。
ほんのり辛味があるのですが、炒めると結構おいしくて。
最初は驚かれるんですけど、一度食べた方には「今日うしく菜ないの?」と言われるほど、密かにファンがついています。
しっかりとした厚みのある葉が特徴のうしく菜
こちらは芽を出したばかりのキャベツ
台風被害からの復活。
農家同士の助け合いの必要性を実感
出店者からも来場者の方からも人気のうしく農園さんですが、9月の台風15号では大きな被害に遭い、その月の出店を見合わせました。
復帰までには時間がかかったのではないですか?
幸い、台風の時期に備えて収穫はあらかた終えていたので、農作物の被害は少なく済みました。
ただ、田んぼの脇にあった、コンバインなどの農業用機械を閉まっている倉庫が吹き飛んで・・・。5m浮いて、10m先まで飛んでいったみたいです。ビニールハウスの囲いも飛ばされました。
未だ完全に復旧作業は終わっていません
はい。その上貯水タンクも吹き飛んでしまって、水がないのが辛かったですね。それでも、すぐに復旧作業にはとりかかれないんですよ。
収穫をしたばかりの農作物が、未出荷の状態だったんです。
傷む前にまずは出荷を急ぎ、その後にようやく農場の復旧作業を始めることができました。横浜北仲マルシェのメンバーも手伝いに来てくれました。
はい。
台風後には、bazioの斉藤さんは壊れたパイプハウスの解体に。
田中農園の田中さんや、ワタナベファームのしげさんは倒木の伐採を手伝いに来てくれましたね。
お客さんやほかの出店者さんからも物資の支援もいただいて、本当にありがたかったです。
よっしーのお芋屋さんは、チーム藤沢として水を1tと500リットル。Hirayama Rice Farmingさんは収穫も手伝ってくれました。
他にも、様々な方からのサポートをいただいて、農家は助け合っていかないと、とあらためて感じましたね。
自然災害への備えには、コミュニティ作りも大切ということでしょうか?
はい、それも県をまたいだネットワークを広げることです。
今回はたまたま県外に仲間がいたからサポートに来てもらえましたが、同じ千葉で仲間が被災していても、お互いに被災者だから助けにいけません。
しかも、野菜農家と米農家、畜産農家では扱っている機械も違いますから、手伝える部分とそうでない部分がある。
今回の被災は、大きな学びになりました。
ガラスを覆うカーテンが全部落ち、
ガラスには土が積もったそう
もともと、耕作放棄地を畑に蘇らせる取り組みを進めてきたうしく農園さんですが、これも近隣の農家同士をつなげるコミュニティを形成していますね。
元々は父が始めた取り組みが、今うまく循環するようになりました。
畜産農家と連携して、耕作放棄地に牧草を巻くことで畑に戻していきます。
担当した畑は、その農家の跡取りがいなくなっても違う農家が管理できるように、15人で7、8軒を共有しているイメージです。
農家同士がWIN-WINとなる
コミュ二ティを築いています
同じものをずっと同じ場所で育てていると、土が痩せてしまうんです。その間に違う作物を、違う農家が育てることで、効率よく畑を使うことができます。
すごい!農家同士のチームワークですね!使用料はかかるんですか?
手が回らない土地をゴボウ農家さんに貸しているんですが、収穫したゴボウを“年貢”としていただいています(笑)
そうしたお野菜を、私がマルシェに持っていったりもしています。
担い手が減っているなかで、知恵を絞らないと生き残っていけません。農業を盛り上げる、というよりも、“つぶれる農家を減らす”という使命感ですね。今はこれを雇用にも結びつけたいと思っています。
本当に農家のためになることを
考えつくす、うしくさん
学校法人などと連携して、まずは農家のリアルを体験させることから始めています。
農業って、いくらハードだと知っているつもりになっていても、実際の体験は超えられない。
“思っていたよりきつかった”という理由で辞めていってしまう人も多いんです。農家としては、せっかく時間をかけて育ててきた人がいなくなるのは正直コストだけがかかっている状況。
そうしたミスマッチを減らすためにも、インターンのような仕組み化を目指しています。
持続可能な農業を、土地、人材の両面から形作っているんですね。うしく農園さんのお米とお野菜を食べることで、その活動に貢献できるのは嬉しいです。
想いをともにできる仲間や、応援してくれる消費者さんと出会えるのも、マルシェのいいところです。
台風被害後初の、横浜北仲マルシェ復帰の日。
美味しい新米のおにぎりを試食させてくれました。
育った場所のストーリーを知りながらいただく、お野菜やお米の味は特別に感じられます。これからももずっとこの味を守ってほしいです!
みなさんがたくさんお野菜やお米を買って食べてくれることが、農家の力になります。
日本の食を守るために、農業を続けられる仕組みづくりにもつながっていきます。これからも横浜北仲マルシェでお待ちしています!
これからも楽しみにしています!
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